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『エンジニアリングマネージャーのしごと』を読んだ

エンジニアリングマネージャーのしごと
本書は、エンジニアリングチームのマネジメントの仕事全般を紹介し、エンジニアリングマネージャーに必要な考え方やスキルを解説します。はじめに、自分の役割と組織のさまざまな部分がどう関係するかを理解し、習慣を整えることで自分自身を管理することを学びます。そして、日々のマネジメント業務で必要なツールとプロセスを紹介し、スタッフとの関係性の構築、モチベーションの理解、評価や採用などを解説します。さらに社内政治や難しい状況での判断、その後のキャリアについて説明します。 マネジメントのさまざまな段階に沿って、日々の仕事に取り入れられる実践的なアドバイスを紹介する本書は、エンジニアリングチームのマネージャーに必携の一冊です。
エンジニアリングマネージャーのしごと favicon https://www.oreilly.co.jp/books/9784873119946/
エンジニアリングマネージャーのしごと

単なる管理職ではなくて「エンジニアリングマネージャー」に特化した本として良かった。

自分も小規模なチームのリーダーをやりつつ手は動かしているので「エンジニアリングマネージャー」に当たるはずで、ここで悩ましいのがどこまで自分で手を動かすかという線の引き方になる。本書は序盤で「マネージャーのアウトプット=チームのアウトプット+影響を与えた他のチームのアウトプット」という大前提を敷いており、たびたびこの方程式を持ち出しては、それにぶら下がる形で各論を述べる、という構成になっているので納得感が得やすい。注力するべきは「チームのアウトプット」を最大化することであり、自分個人のアウトプットの最大化ではない。役割を担っている以上、周囲からもマネージャーとしての仕事が期待されるわけでもある。したがって冒頭の悩みに対する解は、まずはチームのアウトプット最大化に時間を割くべきであり、自分がコーディングなどに使う時間は二の次、というのが明白になる。まぁ言われてみればそれはそうだという話でしかなくて、二足のわらじを履いているようでいながら、実際にはマネージャーのほうに軸足が強く置かれるということになる。このことを明確かつきっぱりと突きつけてくれた上で、そのために何をするべきかも具体化してくれる。

マネージャーというのは自分で直接生産するよりは、連絡をしたり調整をしたり、というような業務が多くなるので、自分が何を成したのかが曖昧になりやすくもある。また責任範囲も大きくなるので、あれこれと心配事が増えやすくもある。このあたりについてもRACIやAppleのDRI(参考 : ジョブズが会議を生産的にした3つの方法 | ライフハッカー・ジャパン)を使って責任を明確に整理したり、マネージャーの仕事を言語化して4つに分類してくれたりしているので、自分で自分の仕事を見通しやすくなったように感じる。

心配事が増えやすい点に関しては、よく言われる「コントローラブルなものとアンコントローラブルなものを区別して、後者について心配するのをやめろ」という話が出てくる。この手の話は7つの習慣の1つとして「関心の輪、影響の輪」という形で言及されていたり、「ニーバーの祈り」などの類似概念も存在する。自分が影響を及ぼし得ないものに対して関心を持っても徒労になるという点には同意する一方で、「ニーバーの祈り」にも書かれているように、「変えられないものと変えるべきものを区別する」には「賢さ」が必要になる、つまり簡単なことではない。チーム内の不文律、チームメンバー構成、社内ルール、現状のアーキテクチャなどなど、こういったものが本当に変えられないのか、変えるのが困難なだけなのか、特にマネージャーという立場においては、如何に前提を疑った上でコントロールしていけるかというのがより重要になってくると感じた。前提や枠組みを疑えるか、という点については以下のエントリーも非常に示唆に富んでいる。「関心の輪、影響の輪」を単なる諦念として扱わないようには注意したい。

大きな枠組みに目を向けさせないようにする - 紙屋研究所
なぜ「自分のできること」の範囲に限定するのか 娘(中1)が「環境新聞」というのを学校の宿題で作っていて、横から眺めていた。 温暖化について書いている。 「結論は自分ができることを書かないといけないんだ」と言って、ムダな電気を消すとかそういうことを書いていた。 その後授業参観で、クラスの壁に貼られた、クラスの生徒たちがそれぞれつくった「新聞」を見る機会があったが、温暖化だけでなく、ごみの減量とか、プラスチックごみの縮減とか、さまざまな環境問題についてまさに「自分ができること」で締めくくられていた。例外なく全て。徹底した指示・指導なのであろう。 なぜ「自分のできること」の範囲に限定するのだろうか。…
大きな枠組みに目を向けさせないようにする - 紙屋研究所 favicon https://kamiyakenkyujo.hatenablog.com/entry/2020/11/13/002402
大きな枠組みに目を向けさせないようにする - 紙屋研究所

これほどつらつらと様々な概念を連想して思考できたのは、ひとえにScrapboxのおかげで、Scrapboxにメモしながら本を読むのはやはりいいなぁ、と思ったりもしたのだった。

連想のストック - 西尾泰和の外部脳
2019-02-14 書き出し法は、思考を小さい断片として書き出していく 書き出したものは消えなくなる 書き出したものを見ながらさらに考えることができる KJ法のボトムアップのグループ編成は、情報の関係を物理的な近さによって表現する 言葉にしにくい感覚を言葉ではない方法でアウトプットする アウトプットしたものは消えなくなるし、思考の対象にできる これによって構造の発見を支援する Scrapboxは
連想のストック - 西尾泰和の外部脳 favicon https://scrapbox.io/nishio/連想のストック
連想のストック - 西尾泰和の外部脳