『なぜ危機に気づけなかったのか』を読んだ
「問題発見」の技術、メソッドを知りたくて、 Michael A. Roberto の『なぜ危機に気づけなかったのか(原題 : Know What You Don't Know )』を読んだ。
問題発見を学びたいと思ったきっかけはリーダー職に就いたこと。チームの問題、メンバー個々の問題というのをきちんと察知してアクションできるようになりたかったのだけど、具体的にどうすればいいのか考えあぐねていたので本に頼ってみた。
僕らソフトウェア系のエンジニアは「問題解決」が本職と言ってもいいぐらいだけど、問題を解決するにあたっては、解決するべき問題をまず的確に見つける必要がある。それがつまり「問題発見」の技術ということになる。
ところが長年、この分野に関してあまり良い本に巡り会えなかった。真っ先に名前が挙がるのは『ライト、ついてますか』だと思うのだが、この本はどちらかと言えば、何かトラブルが顕在化した後で、では解決するべき問題は具体的になんなのか、それをどう捉えて解決していくべきなのかという、「正しい問題定義」の本に近い。
僕が求めている「問題発見」の技術はそうではなくて、可視化されていない問題、あるいは見過ごされていたり、自覚されていない問題を如何にあぶり出すか、という技術のことだ。ラムズフェルド元アメリカ国務長官の Unknown unknowns という言葉が近い。そしてこの本は原題を見ればわかる通り、僕の求めていたことにドンピシャな本だった。
本書では問題発見に必要なスキルを7つに分類していて、それぞれ実際に起きた問題事例を教訓として、具体的なプラクティスに落とし込んでいるので飲み込みやすかった。
- フィルターを避ける
- 人類学者になる
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人に質問するだけでなく、その行動を見守らなければならない。というのも、人の発言と行動は一致しないものだからだ。 (p.7)
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- パターンを探す
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リーダーが目前の問題を明確に把握していなければ、役に立つ類似点を見つけて、それを正しく使うことはできない。この方法を使えば、暗黙の想定を明らかにし、事実と想定の区別をつけざるを得なくなる。 (p.136)
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想定の検証:七つの重要な質問
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- この状況における事実は何か。
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- 暖味な、あるいは不明瞭なことは何か。
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- 明確な想定と暗黙の想定と考えられることは何か。
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- 事実と想定を混同していないか。
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(略)
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- 点を結びつける
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最初に自分の意見を述べるよりは、リーダーは会議のファシリテーター(進行役)に徹したほうがいい。リーダーは公開されていない情報を明るみに出すために積極的に介入し、メンバーを自由閣達な対話に引き込むべきであろう。 (p.167)
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- 価値のある失敗を奨励する
- 話し方と聴き方を教える
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往々にして相手が話し終わらないうちに結論を出してしまうことがある。相手が話している最中に、どう答えようかと考えることがある。特定の言葉や意見の意味について、さまざまな憶測をめぐらし、話し手も自分がよく知っているのと同じ言葉づかいでしゃべっているものと早合点することが多い。 (p.216)
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ある人が反対意見を述べても、それが多奴派の考え方をただちに変えることはないだろう。しかし、それによって異なった考え方が刺激されることが多い。 (p.227)
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- ゲームの録画を見る
今は WFH で slack でのやり取りがメインになっているので、特に「フィルターを避ける」「人類学者になる」という観察を重視するスタイルは強く意識したいところだし、「点を結びつける」「話し方と聴き方を教える」に書かれているような、話し方や MTG でのコツについてはすぐにでも実践していきたい。「話し方と聴き方を教える」での指摘は結構刺さるものがあった。