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Notion Mailでメールをトリアージしている

最近、Notionが「 Notion Mail 」という、Gmail用のメールクライアント(Web appとiOS appがある)を出しているのだが、これがわりと良くて日常的に使っている。ざっくり言ってしまえば、Notionのデータベース機能の要領でメールを整理できるアプリと言う感覚に近く、表示するメールのフィルタ条件が異なる複数のViewを作ったり、メールに新たなプロパティをメタ情報として追加したりと言ったことができる。

効率的なメール処理を目指したクライアントアプリは他にもあるが、Notion MailのUI/UXは比較的独自性が強く感じる。そのわりに 公式Help を見ても個々の機能説明しかなく、どういった使い方をすると便利なのか、設計思想やワークフローが見えてこないので、何か良さそうな空気を覚えつつも、使いこなすまでに時間がかかるツールだと思っている。

Notion Mailの実践について書いた記事も他に見かけないので、自分なりの解を書いてみる。端的に言えば、Notion MailはInbox Zero(受信トレイのメールをトリアージして適宜分類し、受信トレイにメールがゼロの状態を保つ運用)を念頭に、以下のようなワークフローを想定したツールだと思う。

  • AIを使って自動ラベル付与を行い、メールを効率的に分類、トリアージする
  • 付与したラベルなどを使ってフィルタ条件を作成し、受信トレイには本当に見るべきメールだけを表示する(その他、必要に応じてViewを追加する)
  • 日々の運用では受信トレイを中心にメールを処理し、Actionが必要なものはPriorityを付与して管理する

AIによる自動ラベル付与

Notion Mailの売りのひとつがこれだと思うのだが、最初に断っておくと筆者は活用していない。いくつかのメールを選択してNotion AIに依頼すると、それらのメールと類似したメールを次から自動的に仕分けてラベル付与を行ってくれるという、いまどきのLLMになら確かに任せられそうな機能だ。

活用していない理由としては、AIによる分類は確実性が保証できないからだ。誤った分類が行われて、それによってメールの見逃しが発生する事態は避けたい。Gmailのオートフィルタは管理や編集が面倒なものではあるが、確実性を重視してオートフィルタによるラベル付与を採用している。また、Notionでできるのはあくまでラベル付与のみであり、Gmailのような「ラベル付与 and 既読にする」といった自動処理はできない。

逆に「ざっくり分類できればOK」「Gmailのオートフィルタ条件を書くのが嫌い」といった理由があれば、AI auto labelは使える機能だと思う。何度か実験はしてみたが、それなりに精度はありそうだった。

本当に必要なメールだけを確認するようViewを分ける

Notion MailとGmailで体験が大きく異なる点の1つが、このViewの機能だと思う。

Gmailでメールを表示する画面は、例えば「受信トレイ」であれば「アーカイブされていないメールを表示する」といった条件が決まっており、カスタマイズ性が高くない。 マルチ受信トレイ を使えば、検索条件に基づいた追加受信トレイを作成できるが、作成できる受信トレイは5個までだったり、各受信トレイは並べて表示するしかできない、といった制約がある。

Notion Mailでは、任意の検索条件(From、To、添付ファイルの有無、ラベルの複数条件や除外条件、などなど)でメールを表示するViewを好きに追加できる。そして受信トレイもViewの1つであり、デフォルトではGmailと同様に未アーカイブのメールを表示するのだが、この条件を変更できる。

Notion Mailのキーになるのはここだと考えている。受信トレイには、優先度高く処理が必要なメールだけを表示するよう設定し、そうではないメールはViewを分けて後で処理したできるようにすることで、効率化を図ることができる。先述のAIによる自動ラベル機能でも、ラベルを作るときに「このラベルは受信トレイに残すか? それとも除外するか?」というモーダルが表示される。つまりはAIによってメールを受信トレイに残すか残さないか、最初のトリアージを任せるのがNotion Mailだと捉えている。

Gmailでもオートフィルタを使えば受信トレイのスキップが可能だが、スキップさせるということは「アーカイブする」ことと同義だった。Notion Mailではアーカイブしないままに受信トレイから除外できるようになるので、重要度の高い、すぐ読むべきものだけを受信トレイに残し、時間をおいて読んでもよいようなものは別のViewへと分けるといったことが可能になる。

筆者の場合、カレンダー関連のメールと、Gmailの「プロモーション」カテゴリに分類されるメール(=企業からのメーリングリストや広告)は受信トレイから除外している。いずれも緊急性は高くないが、出欠確認、情報収集、不要ならUnsubscribeといった処理は必要になるので、別のViewから確認している。

Priorityを活用してNext Actionを明確にする

メールを仕分ける際には、Notion Mail独自のプロパティ(チェックボックスや任意のテキストなど)も付与できる。Gmailにはない機能をあまり多用したくはないのだが、「Priority」については実態がGmailラベルだと言うこともあり、これを活用して分類を行っている。

Priorityはデフォルトだと「To-do」「Important」「Waiting」と言った値が用意されており、優先度と言うよりはメールの状態を表すものに近い。こういった用途では、Gmailだとスターやマルチスターを使っていたところだが、Priorityでは文字が書けるので、「返信が必要」「アクションが必要(EOL通知のような)」など、直接的にNext Actionがわかりやすくなり、重宝している。ラベルの一形態に過ぎないと言えばそうなのだが、Priorityはインジケータのように目立つ形で表示されるので、視認性も高くなる。

Priorityの正体はラベルだが自動付与はできない

Priorityの正体はGmailのラベルである。Priorityを付与したメールをGmail側で開くと、 [Notion]/Priority-xxxx というラベルが付いているのがわかる。

ならばGmail側のオートフィルタを使って、自動的にPriority付与ができるのではないか、と考えるところだが、なぜかこれはできない。オートフィルタで付与したPriorityラベルは、Notion Mail側で認識してくれない。手動で付与した場合はNotion Mailにも反映されるので、このあたりの挙動はやや謎が残る。

まぁ自動識別するより、自身でPriorityを付与するほうが意識の上にものぼりやすいので、そこまで困っているほどでもない。

StatusとPriority

なお、Priorityと似たようなプロパティとしてStatusが存在する。両者の違いはほとんどないように思えるのだが、唯一「StatusはViewのグループ化に使えない」という点が異なる。

グループ化とは、あるViewの中でさらに何らかのプロパティを使ってメールをグルーピングして表示する機能である。筆者の場合はPriorityを付与したメールのみ表示したViewの中を、Priority別でグループに分けている。Statusはなぜかグルーピング条件として使えないので、採用を見送った。

雑多な受信トレイをやめて、視界をクリアに保つ

長々書いてしまったが、要は 「ラベリングによるトリアージをAIで効率化した上で、トリアージレベルなどに応じてViewを適宜分離して、大量のメールが来ても視界をクリアに保つ」 というのがNotion Mailなんだと思う。重要な取引先からのメールだけを集めたViewだとか、数多のクラウドサービスから来る通知メールだけのViewだとか、そういったものを気軽に作れるのがいい。

とはいえ、筆者の場合は人対人の連絡ではSlackが主ということもあり、メールの総量は多くない。ただ、それ故に油断して見逃すことも多かったので、よく来る管理職としての申請/承認系のメールや請求関連のものなどは専用のViewを作り、以前より見逃しは少なくなった。雑多なメールが押し込まれたGmailの受信トレイは、それだけで開く気が失せてしまうものでもあり、Viewを分けることで精神的な負荷も和らいだ気がしている。

最後に、そのほか細かなTipsを書いて終わりにする。まだ登場から1年も経っていないこともあり、今後の発展に期待している部分も大きい。

  • ⌘ + k によるコマンドパレットからほとんどの操作(Viewの移動やメールに対する処理など)ができるので、ショートカットを覚えずともこれでなんとかなる。
  • ショートカットも多くはGmailと同様のものがあり、流用できる。
  • GUI上には動線がなく、 ⌘ + k やショートカットのみ表示できる画面がいくつかある。例えば「すべてのメール」。
  • GmailにおけるStarは、Notion Mail上だとなぜか扱いが低く、ラベルの一種としてしか認識されない(☆マークとしては表示できない)。
  • 不具合がいくらか見られる。
    • バルク処理に問題がある。Notion Mailで100通近いメールへの一括ラベル付与などを行っても、Gmailにうまく反映されない。
    • 一部のメールで改行が無視される。条件は把握できていない。