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the world as code

帝京大学通信課程での社会人大学生2年目を終えて

帝京大学理工学部情報科学科通信課程2年目(2年次編入のため、学年は3年生)を終えたので記録する。1年目については 社会人大学生1年目を終えて、大学生活と勉強法とその困難 - the world as code で書いた。

単位修得状況

評価 2年次修得単位 3年次修得単位
S 8 2
A 12 8
B 4 4
C 0 4
合計 24 18

いやぁ、鈍化鈍化って感じがしますね。ただ昨年はスクーリング科目(週末2〜3日間通学し、集中的に講義を受けて単位を取得する科目)を6単位取っているので、自宅学習のペースとしては変わらずと言っていいのかもしれない。ダメかもしれない。

コロナ禍で家にいる時間が増えたのだから、大学に費やせる時間も増えてよさそうなものだけど、まぁいろいろもろもろで実際のところあまり増えなかった。これは後述。

残り50単位。頑張ればギリギリあと2年でイケそうだが無理をしなければ3年か、というところ。

コロナ禍と通信大学生

通学機会の消失

2020年度はコロナ禍により、大学生がかなり影響を受けたことは報道でも周知の通り。小中高校が対面授業を再開するなか、なぜ大学だけがオンライン授業を続けるのかという怨嗟の声もよく聞こえた。

通信課程はあまり影響なかったんじゃないかと思われそうだが、多少の影響はあった。スクーリングや科目修得試験など、年に何回かはキャンパスへ赴く機会もあるのだが、それらはすべてオンラインに切り替えられ、今年度は一度もキャンパスへ足を踏み入れることがなかった。

とはいえ、試験については本人確認の手順などが変更になったぐらいで、単に受ける場所が変わるだけなのでそれほど大きな影響はない。スクーリングに関してはグループワークなどが設けられていることも多く、孤独に勉強する通信学生が唯一ほかの学生と交流できる機会だったので、オンライン化を残念に思う人も少なくなかったのではないかと思う(僕はスクーリング科目の必要単位は取り終えているので無関係)。なお、試験は黙して実施するものなので、「三密」には該当しないのではないかという気もするが、通信制は全国に学生が分散している関係上、試験開催により都市圏と郊外間の移動がそこそこ発生する。大学側の懸念はその点だったらしい。

僕としては、試験のときに大学へ行って、学食でごはんを食べたり、併設のイタトマでケーキ食べながら勉強したりする、ちょっとした楽しみを奪われたのが残念だったぐらいで、「大変な思いをした」という気持ちはない。

学習環境の変化(マイナス面)

個人的な話としては、学習環境が多少なり変化した。昨年からの変化で書くので、良ければ冒頭に載せた1年目の記事をあわせて見てほしい。

第一に図書館が使えなくなってしまった。特に予定がない休日は東京都立中央図書館で勉強させてもらっていたが、緊急事態宣言下では来館サービスを停止しており、それ以外の期間も予約や人数制限が入ったので、今年度は一度も利用していない。調査してレポートを書くような課題が今年度はなかったのでまだ良いものの、もしもそういった機会があれば少々面倒なことになりそう。また、家で勉強するより、場所を変えたほうが気分転換になるのは確かなので、以前よりやる気が出なかった日は少なくなかったな、と思う。

また、暗記が必要な科目については「通勤電車内で Anki を使う」という学習方法を取っていたが、通勤が消滅したのでこれもできなくなった。おかげで暗記の状態がちょっとよろしくないな、と感じる機会が増えた気はする。

もちろん、いずれも個人的な環境、習慣の話で、「新しい生活様式」下に適応すればよいという話ではある。それはそう、なのだが、急な環境変化にはどうにも振り回されてしまう。2021年度もおそらくこの調子が続くのだろうし、次はもう少し適応していきたいところ。

学習環境の変化(プラス面)

ちなみに、その他なにか著しくモチベーションが下がっただとか、そういったことはなく、淡々と学習は続けられている。大学の学習を続けること自体はこの2年でだいぶ習慣化できた。

またリモートワークになったことも大きい。今勤めている会社はコアタイムのないフレックス制なので、今は朝の「出勤」を遅らせて10時にして、起床からその時間までを大学の勉強、もしくは趣味の勉強に充てることにしている。毎日の生活リズムがほぼ固定できたことは非常に良かった。一方で自炊やらの機会が増えたり、先述した図書館や Anki の件があったりもしたので、結局学習時間の総量としてはトントンという感覚でいる。

学習の進め方(2年目)

これはあんまり昨年と変わっていないので、1年目の記事を見てもらいたい。小さいところで2つほど変化はあり、1つはすでに書いているとおり Anki を使わなくなってしまったこと。

もう1つは履修科目の管理方法。ついつい10年前の大学時代の習慣に引きずられるようで、去年はあの頃のようにスプレッドシートで愚直に管理していたんだけど、今更それもどうよと気付き、今年は Notion の Board View を使ってカンバン的に管理していた。

Image from Gyazo

が、普段のメモには Scrapbox をメインとしていることもあり、どうも Notion を開く習慣ができず、頓挫した。大学のレポートや課題は GitHub の Private Repository で管理しているので、来年度はそこに GitHub Project のカンバンを作って対処しようと考えている。普段見るものに寄せるの大事。

受けて良かった授業

実際の授業受けてみてどうよ?って話、特に通信大学だとあんまり流れないよなぁというのを 放送大学マイルストーン(仮)|lumpsucker|note を見て思ったので自分もやってみる。「マイル」(元ネタは早稲田の「マイル」でしょう)名乗れる網羅性はなく、あくまで自分の受けた科目の中だけであり、また難易度などの記述はしていない。

ちなみに2年次に受けた科目はその旨を付記しているが、特に履修年次の制限はないので、何年次でも履修はできる。

オートマトンと計算理論

内容としては『アンダースタンディングコンピュテーション』に近い。以前から興味のある分野ではあったものの、自主学習となるとなかなか腰が重く、大学で改めてさらえたのは良い機会だった。僕らの根幹に位置するような分野と捉えている。

アンダースタンディング コンピュテーション
本書は計算理論をRubyでわかりやすく紹介する書籍です。コンピュータサイエンスの主要なテーマである「計算とは何か」という問いに対して、難しい数学の知識を利用をせず、Rubyを使って実際にプログラムを作りながら解説します。さらに、なぜこれらのアイデアが大切なのか、そしてそのアイデアは我々の日常的なプログラミングにどう関係していくのかを解き明かしていきます。日本語版ではまつもとゆきひろさんによる「日本語版まえがき」を収録。プログラミングの根底にある理論を学ぶことで、より広く深くプログラミングを考えたいプログラマ必携の一冊です。監訳者によるサポートページ
アンダースタンディング コンピュテーション favicon https://www.oreilly.co.jp//books/9784873116976/
アンダースタンディング コンピュテーション

情報理論

クロード・シャノンの『A mathematical theory of communication』をベースに、情報源符号化と通信路符号化について学んでいく科目。単に概念的な学習にとどまらず、例えば通信路符号化にあたっては、サンプリングの過程を実際にフーリエ変換を使って解いていくなど、歯ごたえがかなりあった。

コンピュータアーキテクチャ

コンピュータの物理構造を紐解いていくので、シラバスにも書いてあるが「教養」に近いかもしれない。基本情報処理技術者試験を受けた人であれば、あれのハードウェア関連の内容をさらに深化させたものと考えると近いかもしれない。制御装置、演算装置、記憶装置、それぞれの歴史的変遷や概念を追えるので純粋に面白いのだが、一方で覚えることもかなり多い。

数理統計学

社会科学の大学を出ているのでこの分野は一度学んでいるのだけど、改めて。正直コンピュータに直結するのかは「?」だけど、統計知識というのは生きていく上で常に必要なんじゃないかという感覚がある。データを見る、という機会はエンジニアとしてだけではなく、日常生活のなかでも多いし。

データベース論(2年次)

データベーススペシャリストは持っていないのだけど、この科目でかなり補充できたのではないかなと感じる。ただし、ほぼ RDBMS の話であり、 NoSQL などにはあまり対応していない。

グラフ理論(2年次)

巡回セールスマン問題、木構造、有限マルコフ連鎖、なんて単語が出てくる科目。受ける前はネットワーク分野と関連しそうだな、ぐらいの印象だったけど、複数のノードをどう繋ぐか、繋ぎ方のパターン、ノード間の移動パターンなどに関する理論は、情報科学分野の様々な場面で必要になることがわかって非常に興味深かった。

技術者倫理(2年次)

シラバスの言葉を借りると、「技術者はいかにあるべきか」についての内容。実際の科学技術発展に伴う社会問題、倫理的課題などに触れながら、われわれ技術者にはどのような倫理観、社会的責任が求められるのかを追っていく科目。

個人的にはこういう科目を学べるのが大学の醍醐味のように感じる。本を読んだり、ウェブで検索したりして技術知識はいくらでも学んできたけれど、自分が技術者としてどうあるべきか、どういった社会的責任を帯びているかということに、思いを馳せる機会は非常に少なかったように思う。特に情報技術の分野は変化も速く、倫理的課題が大きくクローズアップされることも多い。そういうときに徒手空拳の議論に埋没せず、きちんとした哲学や歴史的経緯への知識を持っていることは結構重要なんじゃないだろうか。